「女々しいよな、俺。蒼乃が離れていくことなんて予想してなかったんだ……。足に怪我しても蒼乃なら罪悪感を覚えても離れていくことはないだろうって、勝手に思い込んでて」
だけど、彼女は罪悪感と同時に会うことをしなくなった。
それが意味することは分かっていた。
嫌がらせに巻き込んだ自分を責めて、これ以上危害を加えないためだって言うのも分かっていた。
蒼乃が決めたことだから、それを見守っていなきゃいけないんだと思った。
だけど、苦しくて悲しくて。また大きな壁を感じて。
自分じゃいけないんだ、その壁を壊せないんだと、そう思ったら無力さに腹が立って。
どうしようもなく日々を過ごすだけだった。
陸嵩は自嘲気味に笑った。
「でも、諦めるつもりはないよ。これからも蒼乃の支えにはなっていきたいし、今は……待ってみるよ」
好きだから、という言葉を飲み込んだ。
もう一度、蒼乃にあった時に一番に伝えようと思っていたからだ。
また答えがだめでもいい、だたもう一度“好きなんだ”と言う事を伝えたい。
「…………」
梅沢は陸嵩の顔をじっと、見つめ、そしてわなわなと震えだした。
ぎゅっと唇をかみ締めて、俯く。
「梅?どした?」
そんな梅沢に驚き、急いで立ち上がり傍に寄る。
すると梅沢が急に顔を上げて、震える声で言った。
「そ、園田さんっ、……お、泳げなくなったんだって」
「……なん、だって?」
陸嵩の顔が硬直する。
「こないだ会ったとき、悲しそうに笑って言ってた。またご飯食べたい、けど今は泳げないからまた今度って」
梅沢の瞳から涙が零れ落ちた。
震える声はしっかりと陸嵩の耳に届いている。



