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がちゃり、音を立てて開いた部屋は冷たくぬくもりを残していなかった。
陸嵩は蒼乃がいた部屋に足を踏み入れ、電気をつける。
「帰ってるわけないか」
部屋の中を一通り見回して呟く。
蒼乃の部屋に訪れるのが陸嵩にとって毎日の日課のようになっていた。
こうしてもしかしたら、という淡い期待を抱きながら蒼乃の部屋に入るのだが答えは決まって同じ。
分かっているのにそうしなくてはいけない気がしてしょうがなかった。
二段ベッドの下。
他愛ない話をしながら、夜を過ごしたこの場所は陸嵩にとって大切だった。
冷たい床を歩き、そこに腰をかけて布団を撫でる。
そして大きく溜息をついて、倒れるようにしてベッドに背中をつく。
会いたい、それが胸を締め付ける。
会ってただ話がしたい、それ以上は何しなくていい。
瞳を閉じかけた陸嵩の耳にがちゃりと部屋が開く音がした。
蒼乃ではないか、と思い体を急いで起こす。
「いっ……!」
その拍子に頭をベッドの角にぶつけ、陸嵩は悲痛な声を上げる。
痛みの涙で視界が滲む中、見えたのは……、
「梅」
泣きそうな顔をしている梅沢だった。
「どした?もう1時過ぎてるよ」
頭をさすりながら陸嵩は笑ってみせる。
此処にこれるのは決まってこの時間帯ぐらいなので、こっそりと部屋を抜け出してきていた陸嵩は梅沢の行動に少し驚いていた。
「やっぱりここだったんだね」
「……気づいてたか」
「そんな気はしてたんだ……。いつもこの時間帯になるといなくなるから」
相部屋の梅沢に気を使い、寝たのを確認して部屋を出ていたのだが、どうやら梅沢はばっちり起きていたらしい。
陸嵩はまいった、と言うように息を吐いた。



