彼女達にはそれが、とても、とても胡散臭く聞こえたのだろう(そりゃそうだ)。
ざわざわと騒ぎ出す。
部室に目をやると、光が口を押さえて此方を見ている。
険しい顔つきなのが此処からでも分かる。
「あーあ、最悪」
「本当だよ。光がぜーんぶ上手く行くって言ってたから話に乗ったのに」
部員がそう言うと、それに賛同して何人かがそうだよ、と同意をした。
その言葉が何を意味するのか、分かるのに時間は掛からなかった。
急速に心臓の音がゆっくりとそしてしっかりと耳に届く。
どくり、どくり、音が耳に響く。
『光がぜーんぶ上手く行くって言ってたから話に乗ったのに』
それはどう言う意味だろう、なんて考えるほど頭の回転が悪いわけじゃない。
嘘だよね、と震える声をあげるほどこの状況を理解できないわけじゃない。
瞳を閉じて、深呼吸。
再び瞳を開けて目の前にいる、人物の顔を見つめた。
「光」
名前を呼ぶと、彼女の肩が一瞬震えて下に落ちていた目線が上へと上がってくる。
その瞳が私を見ることはない。
見ることが出来ない、その意味を知っている。否、知ってしまった。
静かに脈を打つ心臓付近が痛み出したのに気付かないふりをした。
「光だったんだ。今までの事」
責める言い方ではない、だたその事実をかみ締めるようにして言う。
ずきり、と痛みが倍増した(重たい、そして痛い)。
周りの人間は一切目に入らない。だた俯いている光を見つめる。
何を言っていいのか分からなかった。なんだろうか、このモヤモヤとした居た堪れない気持ち。
逃げ出したいのに、逃げてはいけないんだと思う気持ち。
雪兎に兄の事を言われた時とは違う。
あの時は逃げたい一心だった。逃げるしか選択方法はなかった。
でも今回は違う。
逃げては、いけない。
「……んたが……じゃない」



