「辛気臭くなったな、悪いな」
「そんな事ないっすよ。なあ、梅」
「え、は、はい。なんか感動しちゃって……。……っ、す、すいません」
今度はこっちにぎょっとする番だ。
ずず、と鼻水をすすったかと思ったら瞳いっぱいに涙を溜めている。
涙もろいのだろうか。
「ご、ごめっ。……ぼ、僕も昔をちょっと思い出して重ねちゃって……っ」
そう言ってテーブルにセットされているナプキンを取って涙を拭く。
……やっぱり小動物のようだ。
肩を震わせて小さくなる姿なんて、……まるでハムスターにそっくり(失礼すぎる)。
「ああ、梅も言ってたもんな」
よしよし、と梅沢の頭を撫でる陸嵩。
どうやら彼も過去に何らかの思い出があるらしい。
「……っ、うん」
「蒼乃に助けられた事だろ?」
陸嵩の言葉に頷いた梅沢。
そしてその言葉に含まれていた私の名前。
私が梅沢を助けたと言うことが、今はっきりと耳に聞こえた。
……記憶を一生懸命、フル回転で探ってみるが出てこない。
まず第一に接点がない。
固まっている私に雪兎が、大丈夫かと苦笑いをする。
「えっと、……ごめんなさい。記憶にない」
ぺこり、と頭を下げて謝ると彼は必死に手をぶんぶんと振った。
「い、いいんだ。僕にとっては大きいけど園田さんには小さいことだと思うし」
そう言われると、こう良心が痛むような。
「記憶にない……、ああだから梅を紹介した時も、初対面です、って感じしてたもんね」
「……?いや初対面でしょう」
「まあ、蒼乃だからね」
陸嵩が困ったように笑う。
なにが“蒼乃だからね”、なんだ。
首をかしげる私の横で、雪兎は自分の話が一区切りついたからなのかカレーうどんをすすり始めた。
「梅と蒼乃って同じ中学なんだよ?」



