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ジュース缶を抱えた梅沢が戻ってきたのは蒼乃がテラスを後にしてすぐだった。
息を荒げて机に缶を置く。
「……あ、あれ?園田さんは?」
「コーチに呼ばれたって」
陸嵩が告げると、彼は残念そうに眉を寄せた。
「そうなんだ……」
「また話したいって言ってたよ、蒼乃」
「え!そ、それ本当に?」
梅沢の声のトーンがあがる。
嬉しそうに飛び跳ねそうな勢いで手をぎゅっと結んで振っている。
小動物みたいだ、と思った陸嵩はふっと顔を緩めた。
だかその顔は一瞬にして険しい顔つきに戻る。
「ねえ、梅」
「え?」
「おかしいよね?」
その発言で、梅沢も何のことだか分かったようだ。
すぐに喜びの顔は真剣な顔へと変わる。
ごくりと喉を鳴らすと、乾いた唇を開ける。
「うん。さっき園田さんがいたから言わなかったけど、“やり過ぎたかな?”って言うのも聞こえた」
「……やっぱり」
最近の蒼乃の行動からしておかしいと思っていた。
梅沢の情報でも限度が有るし、蒼乃が何をされていたのか何を思っていたのか、そんなのは完全に把握できない。
だが蒼乃の態度と怪我。
何かあるに違いないと思っていたが、今回の事で少し確証がつかめてきた。
蒼乃が誰かに、何かされているって言う確証が。
「……梅、原因まではわかんないかな?」
「そこまではちょっと」
二人は沈黙して、そしてお互い目を合わせると静かに頷いた。
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