背にぶわりと汗が出る。熱いからではない、嫌な汗だ。
「ごめん、コーチからだ」
「どーぞ、どーぞ」
「はい、園田です。…………はい、軽いものです。練習に支障が出るほどではありません。…………分かりました、一度コーチの所に向かいます。…………はい、失礼します」
嫌な予感は的中だ。
「コーチのところ行ってくる」
「……足の事?」
その通りだ。
こくん、と頷くと彼も無言で頷いた。
「梅沢くんとまた話せるかな?」
「うん?……ああ、言っとくよ」
「ありがとう。よろしく伝えて。じゃあ」
椅子から立ち上がって、陸嵩に背を向ける。
……コーチに足の事が伝わった。
絶対保険医が伝えたに違いないが、黙っておいてと言ったのに。
酷い、と保険医を責めるべきなのか、落とした人を恨むのか。
いや私の不注意だって責めるべき対象になる。
大きい溜息を一つ。重たい足取りで教官室へと向かった。



