学園マーメイド


彼が何故その事実を知っていたのかは知らない。
だけど腫れ物を扱うような人たちの中に、それでも私を庇ってくれた人がいたと思うと、心の奥底がじん、と熱くなる。
彼を小動物だと言った事を撤回しよう(なにかおかしいが)。
私は無意識にきゅっと両手を握っていた。


「んで、梅に言ったの。蒼乃に酷い事した分、友達になってちゃんと償うからって。梅は照れくさそうに、複雑そうに笑ってた」
「……そっか」
「ん。そんでその、蒼乃に何かあったら知ってる限りでいいから教えて、って……梅に言ったから……、えっと梅は逐一報告してくれんの」


下を向いて手をいじり始める陸嵩。
なんだ、私は軽くストーカー発言をされているんではないか。
と、感じたがそんな嫌な気持ちではなく、ふんわりと暖かく許せてしまう。
彼によって私の精神も大分彼色に侵されているらしい。
ふっ、と笑うと陸嵩の顔がさっと赤くなる。


「心配してくれて、アリガト」
「……ちょっと気持ち悪いとか思ったでしょ」
「んー、ストーカー発言を堂々とされたなあ、とは思った」
「ス、ストーカー?そ、そんな!そんなつもりはないから!絶対ないから!」


一生懸命に弁解をする彼は耳まで真っ赤にしている。
これじゃあバンビ、じゃなくて、モンキー、だ。
なんて考えると可笑しくて、噴出してしまうと、彼も便乗して笑い出す。
さっきの不自然だった空気が一変して変わる。彼は魔法を持っているみたいだ。
私には絶対に使えないようなすごく素敵な魔法。


「はは……あは。はぁ、……でもよく梅……沢くんはあたしの事知ってたね?」
「あー、ああ。え?……あれ?蒼乃と梅って」


陸嵩が最後まで言い終わらないうちに、私の携帯が鳴った。
ディスプレイにはコーチと出ている。