慌てた様子で目を私に向けたり梅沢一輝に向けたりする。
「え、えーっと。梅!ちょっとジュース買ってきて」
「あ、わ、分かった。なんでもいい?」
「なんでも!なんでもいいから頼んだ」
突拍子もなく、どうしてそうなるのかも聞けないまま、梅沢一輝は席を立つと早々と走り出してしまった。
後姿を呆然と眺めて、陸嵩へ向き直る。
「……なんで?」
「……ま、まあ。そこはその、察して欲しいけど……、無理か」
と、一人で納得してしまった。
何がなんだか分からないまま、話は進行していくようだ。
「梅さ、相部屋のやつじゃん?だから蒼乃のことも良く話してて」
「ああ」
相部屋の人が陸嵩を私の部屋で寝る事をオッケーしたのには驚いたが、(大体、相部屋の人に正直に離した陸嵩にも驚いたしアホだと思った)梅沢一輝だったわけだ。
彼だったら了承しそうだ。うん、押し切られたんだろうか。
「……陸上勝負持ちかけたじゃん?」
「ん?……ああ、100Mのやつ?」
「うん、そう」
その時を思い出しているのだろうか。
少し苦い顔のまま続ける。
「あの日のすぐ後、梅に言われたんだ。“園田さんは、悪くないよ!”って。そりゃあもうすごい剣幕でさ」
―――『園田さんは悪くない!バンビ君とか他の人は知らないだろうけど、園田さんは水泳部員一人ひとりに謝って復帰してもらおうとしてたんだよ!何度も何度も頭下げて謝って!コーチや顧問の先生にだって説得して!園田さんは悪くないよ!』
「普段、大声を上げたりするような奴じゃないんだよ?梅の目が、真剣で泣きそうで、それが真実なんだって気付いて……。だから俺、本当に蒼乃に悪い事したんだって思ったんだ」



