頭を下げたままでいると保険医の溜息が聞こえた。
「……分かった。とりあえず今日の練習は控えめにして、夜はちゃんと氷で冷すか湿布を張るかして対応してね」
その言葉を聞いて安堵の息が漏れて顔が緩む。
顔を上げて緩んだ顔のままお礼を言う。
「はい、ありがとうございます」
頭を下げて保健室を出る。
自分が水泳部部員にしてきたことの罪は十分自覚している。
水泳部からの嫌がらせならまだ受け止められる。
だがこれは、さすがに対象が間違っているだろう。
嫌がらせの原因、それは陸嵩にあると言う事。
そして雪兎にもあると言う事。
まあ、だからと言って二人に矛先を向けられるのはこれまた問題が別だ。
靴下を脱いで、靴を手で持った状態(簡単に言うと裸足)で廊下を歩くと、ひんやりとして気持ちがいい。
ぺたぺたとなる音も自分の気持ちとは逆の陽気な音を出している。
軽いと診断されたからには“軽い”のだろう。
少し安静にしていれば大丈夫、と考えて廊下の角を曲がろうとした所だった。
「蒼乃……?」
一番出会いたくない人に出会ってしまった。
「陸嵩……」
彼は私の足に目線を落とすとすぐに顔色を変えた。
駆け寄ってきて声を荒げる。
「ちょ、その足なに?打撲?捻挫?」
せめて靴下を履いておけばよかったと自分を恨む。



