「……そ、っか」
「……」
「……」
じ、っとくっきりとした二重の目で見つめられる。
黒い瞳。
吸いこまれそうな、大きな黒い瞳。
逸らしたのは、私だった。
「……長く、ここにいるのもいけないので。私、帰ります」
「えっ、まだいなよ。それに、また倒れたらどうするの」
「……」
何も言えなかった。
ここを出てから、また繁華街を歩こうと思っていたから。
それに、倒れた原因が分からない今、平気ですよと言っても説得力はない。
……帰るのが遅くなっても、あの2人は何も気にしないのだとは思うけど。
でも、あの狂った状態の……特に母に対しては普通でいないと。
こっちが何か変わったことをして、向こうがパニックになってしまったら、さらに家は崩壊するような気がするのだ。
