「宮崎さんが少しでも喜んでくれれば、って思ったけど…。ちょっとやり過ぎだったよな。気分悪くさせちゃったね。」
「ち、ち…。」
違うと言いたいのだが、胸が苦しくてすんなり言えない。
「ごめんね。帰ろうっか。」
吹っ切れた顔で稔は笑顔を見せると、先に歩き出した。
(違うの…。)
言いたい事が口に出せない。
(嫌じゃないの…。)
伝えたい事が出てこない。
(本当は…。)
両手で拳を作りながら俯き、じっと動けない穂乃花を置いて稔は先に歩いて行く。
(このまま、2度と一緒に歩けない気がする…。)
稔の背中が小さくなっていく。
(言わないと…。)
気持ちが込み上げてくる。
(今、言わないと…。)
必死に自分を奮い立たせ、顔を上げた瞬間だった。

