晴れ、時々、運命のいたずら




「もちろん、有紗ちゃんは来年中学生でまだ義務教育も終わっていませんし、いきなりこのような話をされても困惑されるお気持ちも分かります。私と致しましては、中学は香川県で通って頂いて、中学卒業と同時に東京に来て頂く、と言うプランを立てております。」



「はぁ…。」



「失礼ですが、お母様、ご主人様は?」



「うちは、有紗と私、2人だけの母子家庭です。主人は…、出て行きました。」



「それは失礼な事を伺いして申し訳ございません。東京に有紗ちゃんだけ来て頂くつもりはございません。もちろん、お母様もご一緒に、です。住居は弊社が契約しているマンションが都内に何ヶ所かありますのでご安心下さい。」



直美は広げた書類の1枚を取り上げ、千夏の前に見せた。


その書類には4軒ほど住居の情報が記載されてある。


千夏は相変わらず困惑な表情を出しながらも、直美に問いかけた。



「どうして…、ここまで有紗の為にして下さるのですか?」



「先ほどもお伝えしました通り、有紗ちゃんにはアイドルの可能性が…。」



「有紗の何をご存じなのでしょうか?」



千夏の表情が困惑から不審に変わる。



「私と有紗のような香川の田舎者を弄んでそんなに楽しいですか?」



「私はそのようなつもりは…。」



「はっきり申し上げまして、今信じろと言われましても到底無理です。」



少し強めの口調で伝えた。



「もちろん、今決めて頂くつもりは毛頭ございません。では、これを見て頂けますか?」



直美は別の書類を2枚広げて見せた。