晴れ、時々、運命のいたずら




「単刀直入にお伝え致します。」



直美は席に着き、素早く注文を終えると、千夏と有紗を交互に見て真剣な表情で伝えた。



「有紗ちゃんには歌唱力、雰囲気、風貌…そのどれをとっても華があります。これからの若者達に勇気と元気を与える為、是非、弊社事務所に入って頂き、アイドルとして活動して頂きたいと思っております。」



「ア、アイドル!?」



冷静に淡々と話す直美に反するように千夏が思わず大声を出してしまった。



「そうです。今、アイドルは戦国時代です。
毎日のようにテレビに出ているアイドルから数百人単位の小劇場で歌うアイドル、地下アイドルまで。
その数は計り知れません。
ですが、私は有紗ちゃんに可能性を感じています。
有紗ちゃんはアイドルとして成功できる素質を持っていると考えております。」



有紗は直美と千夏のやり取りをただただ眺めている。



「すみませんが…。」



「何でしょう?」



「ここは、香川県の小さな田舎町。確かに有紗は歌は上手いと母親の私も感じております。だからといって、アイドルなんて…。」



明らかな疑惑のまなざしを直美に向ける。


直美はホットコーヒーを口にした後、隣に座っている島根に目で合図をして鞄から数枚の書類をテーブルの上に広げさせた。