晴れ、時々、運命のいたずら




「母さん、やったよ!」



有紗はステージ袖に戻ると、裏で待っていた千夏に微笑みながら受け取った花束を渡した。



「まぁ、私は有紗しか優勝はないと思っていたからね。」



「私の歌、みんな喜んでくれたかなぁ?」



「もちろんよ!」



「徳島有紗ちゃん、ですね?」



喜びを分かち合っていた有紗は背中から突然声をかけられ、千夏と共に振り向いた。


紺色のジャケットにスカート。


色白の肌に赤いフレームが鮮やかなメガネをかけた女性と、その後ろには清潔感漂う黒いスーツをしっかり着こなした男性が立っている。



「はい…。」



「お母様、ですよね?」



「はい、失礼ですが…。」



千夏も有紗も見知らぬ男女から声を掛けられ少し困惑した表情を浮かべている。



「私、ゴールドプロモーションの山形と申します。」



直美はジャケットの内ポケットから名刺入れを取り出し、千夏に差し出した。



『ゴールドプロモーション代表取締役社長 山形直美。』



「ゴールド、プロモーション…。」



千夏には聞いた事もない名前だ。



「弊社は、未来ある子供達にもっとスポットライトを当てようと考えております。」



直美の背後から、島根が説明する。



「あ、あの…。」



突然の事に千夏も有紗も動揺が隠し切れない。



「とりあえず、座って話しましょうか?」



千夏は直美と島根を促し、公民館に隣接されている喫茶店へと案内した。