(長野って暖かいな…。)
北海道出身の穂乃花にとって、長野県での暮らしは今までと大きく変わっていた。
見る物、触る物、感じる物、その全てが新鮮で、思い付いたらノートを広げ、浮かんだポエムを書き留めて行く。
そんな穂乃花をクラスメイトも優しく見守っていた。
「ねぇ、宮崎さん。」
休み時間、いつものように1人机に向かって読書をしていた穂乃花に、稔が声を掛けてきた。
「はい…。」
「もう、このクラスには慣れてきた?」
「うん、皆優しいから…。」
「それは良かったぁ。ねぇ、長野に来てどこかに行った?」
無邪気な笑顔で話しかけてくる。
「…千曲川の河川敷にはよく行くよ。」
「そうじゃなくて、長野の観光名所。上高地とか、善光寺とか、軽井沢とか…。」
いずれも名前は知っているが詳しい事は知らない。
「…どこにも行っていない。」
「宮崎さんってポエムを書く事が好きなんでしょ?」
「うん…。」
「それなら、松本城なんてどう?国宝で凄く有名だけど…。」
稔が覗き込みながら尋ねてくる。

