「これ…。」
「…ごめんね。」
「どうして…。」
「有紗には言うなって、ずっと言われてたから。」
「いつ…。」
「先週の、火曜日…。」
そう伝えながら千夏は一歩一歩、有紗を残して後ろへ下がって行く。
(先週の火曜日って…。)
ふと思い出す。
(火曜日って、まさか…。)
『典子さん、お願いですから、その日は午後からの仕事は入れない様にして貰えませんか?』
『ただ、その日の午後からだけ、予定を空けて貰いたいだけです。』
『来週火曜日、午後から香川に帰ります。翔太に会いに行きます。待ってて。徳島有紗。』
午後から空けて貰うように必死でお願いして香川に帰るつもりが帰れなかった日だ。
「そんな…、そんな…。」
前を見つめたまま呆然とする。
(それなら…。)
頬に涙がつたう。
(それなら…、あの時、無理矢理にでも帰ってくれば良かった…。)
「私は…、私は…。今まで何の為に…。」
うっすらと雪が積もっている。

