「体壊して、迷惑かけたくないからって離婚したって…。」
「馬鹿な話でしょ。」
千夏が小さく呟く。
「迷惑なんて誰も思ってないのにね…。」
「母さん…。」
「母子家庭になれば自治体が支援してくれるからって…。自治体なんかどうでもいい。お金なんてどうでもいい。お父さんが傍にいるだけで良かったのに…。」
「じゃあ、何で母さんは離婚を…。」
有紗からの問いかけに箸を置いてハンカチで顔を拭う。
「それくらい、お父さんの体はもう壊れてたのよ。ううん、それだけじゃない。精神的にも…。」
「…。」
これ以上は聞いてはいけない気がした。
「ごめんね。でもお父さん、有紗が小学生の時、3年連続まんのう町ののど自慢大会で優勝したでしょ?凄く喜んでいたのよ。」
「父さん…。」
微かに覚えている父親の顔を思い浮かべる。
(やっぱり、私は幸せ者だ。)
千夏はもう一度目頭を拭うと、顔を上げて微笑んだ。
「さ、食べよ。折角のうどんがもったいないから!」

