晴れ、時々、運命のいたずら




「とりあえず、明日から早速ボイストレーニング、ダンスをしてもらうけれど、私はね、有紗ちゃんをアイドルとして成長してもらう為のある作戦を考えているの。」



「ある作戦…?」



軽く首をかしげる。



「それはね、有紗ちゃんともう1人、2人組で売り出そうと思っているの。」



「2人組、ですか…。」



今度は千夏が思わず声を出した。



「そう、2人組。」



直美の眼鏡の奥が光る。



「今、女性アイドルで2人組っていないでしょ?だから新鮮な感じがする事と…。」



「事と…?」



「その相手と競争して欲しいの。そしていずれは、どちらか1人を立派なアイドルにしようと思っているの。」



(どちらか1人…。)



「競争に負けた片方は…。」



千夏が恐る恐る確認する。


直美は千夏を真っ直ぐに見つめながらにっこりと微笑んだ。



「それは、それまでって事。私の見る目もなかったって事。」



「終わり、って事ですか…。」



「結局は本人次第なの。本人にやる気があるなら、応援するかもしれないしね…。」



口元は笑っていても直美の目を見ると、現実の厳しさが嫌と言うほど伝わってくるのが分かる。



「まぁ、そこまで行くのはまだまだ先の事ね。」



(私は、負ける訳にはいかない…。)



ポケットに手を入れ、お守りを握りしめる。



(翔太に、迎えに来てもらうまでは…。)