晴れ、時々、運命のいたずら




「まずは、ボイストレーニング。歌が歌えないアイドルも多いけど、やはり、あなたの歌唱力はとても魅力的だと思うの。」



小学生の頃、地元のちびっこのど自慢大会で3連覇した歌唱力。


その歌唱力は有紗のみならず千夏にとっても自慢の種だ。



「その素晴らしい歌唱力をもっと生かす為には、まだまだトレーニングが必要なの。」



「…。」



「そして、ダンスももちろん出来なきゃ駄目。今の時代、顔だけ良くても一流にはなれない。何でも出来るアイドルを目指さないと。」



直美は当たり前のように話を続ける。



「そして、知識も必要。勉強と言う知識ではなくて、芸能界と言う特殊な世界で生き抜いていく為の知識ね。」



(芸能界で生き抜くための知識…。)



あまりにも想像出来ない事の多さに有紗の顔に徐々に不安の色が表れてくる。


隣で話を聞いている千夏も同じような表情を浮かべる。


その表情を読み取ったのか、直美はここまで話すと、また笑顔を見せた。



「有紗ちゃん、大丈夫。誰だって初めは何も分からないもの。皆有紗ちゃんみたいな顔をしていたから…。」



誰だって、と言う言葉で有紗の心がかなり軽くなった。



「アイドルは鮮度が大切。だから、1分1秒が大切になって来るから、時間は本当に大切にしてね。」



「はい、分かりました。」



直美の問いかけに有紗はやっと言葉を発する事が出来た。