晴れ、時々、運命のいたずら




「まぁ、和三盆。以前も言いましたけど、私も香川出身なので懐かしいですわ。」



直美が箱の文字を見つめながら微笑む。



「確か…、丸亀、でしたよね?」



「ええ。」



直美は懐かしいそうな笑みをそのままに、和三盆を島根に渡すと、今度は有紗に目線を移した。



「有紗ちゃん、東京はどう?」



「今日来たばかりで…。人が多くて圧倒されてます。」



「そうよね。私も初めて東京に来た時は衝撃的だった。こんなに人がいるものかと。丸亀もなかなかの田舎だから…。」



故郷の地名を聞くと心が落ち着くな、と有紗は感じて自然と笑みがこぼれた。


対照的に、直美は今までの笑みを隠すと、真剣な眼差しに変化した。



「有紗ちゃん、今日、たった今から、ここ東京があなたの主戦場になるの。アイドルは甘くないから、本当に厳しくやって行かなければならないの。」



直美に圧倒されて、有紗の顔からも笑みが消える。



「でも、安心して。あなたを一生懸命売り出す為に私達も全力でフォローするから。何と言っても有紗ちゃんが小学生の頃から追いかけて来たのだから。簡単には諦めないから。」



直美はすっと立ち上がると、自分の机に戻り、引き出しから1枚の色紙を持ってソファに戻ってきた。



「明日から、一人前のアイドルになる為の訓練が始まるから。」



「訓練…。」



(何するのだろ?)



有紗には全く想像出来ない。