(香織?)
さらに近づき確信した。
「香織。」
その声に反応して背中を向けている女性が振り返る。
「あ、あんた…。」
間違いなく香織だった。
(香織…。)
睨みつけてくる香織を見ていると涙が溢れてくる。
(私…。)
愛姫はその場で両膝をついて頭を下げた。
「ご、ごめんなさい…。」
「何よ、負け犬だと思ってバカにしに来たのでしょ。」
「違うの、違うの。」
悲しみのあまり唇が震える。
「私は何も理解しようとしなかった。何も分かろうとしなかった。香織の事、何も分かってなかった…。」
「だから、何なのよ!」
「これよ…。」
ポケットから香織の携帯を取り出した。

