「富山愛姫よ。」
(…私?)
「ちょっと待って下さい!」
香織は両手に拳を作っていきなり立ち上がった。
その目に怒りが溢れている。
「どうして、香織じゃないのですか?どうしてこの、何も出来ない田舎者なのですか!」
「何も出来ないからよ。」
「納得出来ません!」
「香織、あなたのそこが駄目なのよ。」
平然と答える。
「何が駄目なのですか!」
「あなたは愛姫に、いつも冷たく当たってるでしょ?私の方が上だと思って。知ってるのよ。人はね、自惚れた時点で成長が止まるのよ。」
「香織は自惚れてなんていないわ!香織の方が上なのは当然なんだから!」
怒鳴りながら伝えると、そのまま、扉を勢いよく開けて出て行った。
「島根。」
「はい。」
島根も香織の後に続いて出て行く。
2人が出て行った後の応接室。
平然と構える直美に対して、愛姫はまだ自分が残る現実を受け止められない表情を浮かべる。
暫く経って、やっとの思いで尋ねた。

