晴れ、時々、運命のいたずら




まんのう町には土器川という、香川県内唯一の一級河川が流れている。


その大きな川の欄干に到着すると、有紗はキョロキョロと辺りを見回した。



(いた。)



川に向かって座っている大きな背中が見える。


有紗はその背中に向かってゆっくりと転げない様に近づいて行った。


その背中は気配を感じたのか、有紗が近づく前に立ち上がるとくるりと振り返った。


にこやかな笑顔が見える。



「翔太、ごめん。遅くなって。」



有紗は目の前に来ると、顔の前で手を合わせて頭を下げた。



「もっとクラスメイトと最後の時間を過ごしたかっただろうに…。」



福岡翔太(ふくおかしょうた)が最後まで言い終わる前に有紗が両手を広げて思い切り抱きついた。



「有紗…。」



「私には、翔太だけで十分だから。」



優しく呟く有紗の腰にそっと手を回す。


暫く抱き合った後、静かに体を離すとお互い見つめ合った。



「今日で…、最後だな。」



翔太が小さく呟く。



「ごめんね…。」



「何言ってるんだよ。アイドルになるのは小さいの頃からの夢だったろ?」



「うん。」