晴れ、時々、運命のいたずら




曲が流れ始めると、目の前の男性は軽く体を揺らし出す。


団扇を大きく左右に振り、一緒に歌い始めた。


横にいる香織はその男性に向かって笑顔で手を振っている。



(やっぱり香織は凄いな。)



感心しながら、気になっている女の子に視線を向ける。


その時、愛姫の体に衝撃が走った。



(泣いてる?)



その姿はステージ上でもはっきりと確認出来た。


女の子が涙を拭いているのだ。


けれど、涙を拭きながら、口元は微笑んでいるように見える。



(もしかして、私達のステージを喜んでくれているの?)



そう思うと嬉しさが込み上げてきた。


Shipとして活動を始めてこれほどまでに嬉しかったのは2度目だ。



(軽井沢の後、届いたファンレター。あの時と同じくらい嬉しい…。)



嬉しさも束の間、曲が終盤に近づき、終わろうとする時に一瞬目を奪われた。


涙を流している女の子の後ろに隠れるように座っていた男性がすっと立ち上がって、客席から離れて行ったのだ。


両手を黄色いパーカーのポケット入れ、最後まで俯いたまま、顔が見えないように去っていく。


最後まで気にはなったが、ショッピングモールでのイベントならShipのファンばかりではない。



(見てくれた事に感謝しなければ。)



心の中でそう思いつつ、無事、曲を歌い終える事が出来た。