長い間車に揺れていたせいか、
わたしは頭痛に顔を歪めた。
しかし見ず知らずの他人である私の叔母に酔いました、なんて言えるはずもなく。

ふう、とため息をついて目線を窓の外へ移す。


次第に増えていく山々。
動物の絵が描かれた飛び出し注意の看板。
それは公式的な物もあれば手書きのものもあったが、
私としては手書きの動物が可愛かったのであれを公式的な看板にしてくれまいかと心の中で訴えた。

「ほたるちゃん、喉乾いてない?」

「………いえ、今はまだ。」

「そう、もし喉が渇いたらこの中の、好きなの飲んでいいわよ」
と叔母は小さなクーラーボックスを手渡してくれた。
正直山道を進んでいる時にハンドルから片手を離すのは乗っているこっちも怖いのでやめて欲しい。




小さなクーラーボックスを開くと、
私の好きな桃水と練乳氷と書かれた真っ赤なパッケージのアイスとそれを食べるためのスプーンが入っていた。


「ふふ、ほたるちゃん、好きでしょ?
桃水と練乳のアイス」

「桃水…は、好きです…」

「姉さん…ほたるちゃんのお母さんもね、それ、大好きだったの。
ほら、アイスも溶ける前に食べちゃいな。美味しいわよぉ〜?」

「………いただきます。」

「おう!じゃんじゃん食べな!」

アイスを一口、口に運んだ。
甘くて、シャリシャリとしたかき氷の食感。

「…………美味しい…」

「あはは、
喜んでくれて何よりだわ」

「あの、ありがとうございます。叔母さん」

「ふふ、お姉さんでいいわよぉ〜
私まだ20だし、おばさんは違和感あるからね」

「でも…」

「あ、お母さんでもいいわよ?
もしくは桜華(おうか)さんでも可」

「………じゃあ、桜華さん…。」

「うん。なぁに?」

「…これから宜しくお願いします」

「こちらこそ!」