そっか、林チーフの言う“ご褒美”は花火のことだったのか。



「やっぱり、ここはよく見えるな」


そう言って笑った顔を見た瞬間、胸が高鳴った。
自分でも頬が一気に熱を帯びていくのが分かる。

普段の林チーフは、口の端を少し上げた意地の悪い笑い方をする。
だからこんな笑顔を向けられるのは初めてだから、どうしていいか分からなくなる。

顔の赤さに気付かれないよう、俯き気味に話しかけた。


「あの、林チーフは毎年ここで花火を見てるんですか?」

「いや、この場所で見るのは初めてだ」

「そうなんですか。じゃあ他の社員の人もここで見れるのは知ってるんですかね?」

「さぁ。他の社員が知ってるのかどうかは分からない。ただ俺は、会社の向かいの建物の隙間から花火が見えてたから、屋上からの方がよく見えるんじゃないかと思って今日は鍵を借りてたんだ。


お前と……………」


小さく呟いた最後の方の言葉は、花火の音にかき消された。