ガチャリ、と鍵を開け林チーフは屋上に入っていった。
「あの……入ってもいいんですか?」
初めて上がった屋上に、入っていいものか不安になりキョロキョロと周りを見ながら言う。
「いいに決まってるだろ。さっさと来い」
手招きされ、戸惑いつつも呼ばれるままに足を踏み入れた。
夜になったとはいえ、夏の風は生ぬるい。
うちの会社は築三十五年の五階建てのコンクリート打ちっぱなしのビル。
お世辞にも綺麗とは言えない。
周りにはマンションは建っているけどそれなりに見晴らしはいいかも。
空を見上げると星が瞬いている。
きっと、明日も晴れそうだな。
「そろそろか……」
林チーフは腕時計を見ながら呟く。
「そろそろって何かあるんですか?」
「お前、何かってそりゃ……」
ドォーン、
林チーフの言葉を遮るように大きな音と共に大輪の花火が夜空に咲いた。
「あ、花火……」
さっきまで花火大会のことばかり考えていたのに、すっかり忘れていた。



