笑った青葉さんは、
私を連れて歩き出した。

『何処に行くんですか?』

多分、訊いても
はぐらかされるが
一応、訊いてみた。

「うん? 内緒」

予想通りの答えだ。

二時間後、
私たちは研究所から
かなり離れた町に来ていた。

『あの、此処は?』

静かな田園が広がる
緑豊かなのどかな所だ。

「私の実家があるのよ」

何でもないことのように
答えてくれたけど、
私が行っていいのだろうか?

いくら、加担してない
とはいえ、あの研究所の者に
変わりはないのに……

「そういえば、すっかり
名前訊くの忘れてたわ」

そういえば……

『水夏(すいか)です』

多分、食べ物のすいかを
想像したにちがいない。

「ごめん、どういう字?」

『水の夏と書くんです』

この名前は、
実は、亡くなった彼が
付けてくれたのだ。

それを青葉さんに
伝えると心底驚いていた。

「そうなんだ」

彼はもう居ないけど、
この名前と青葉さんに
出会えてよかった。

「さぁ、行くわよ」

すたすたと歩く
青葉さんに着いて行き、
彼女の実家に着いた。

『お邪魔します』

最初は彼女の両親に
出てけと言われるかと
思ったけど、私の正体を
知っても好きなだけ
居ていいと言ってくれた。

浩哉さん、私は青葉のお陰で
今、自由になりましたよ。

天国にいる浩哉さん
心の中で話しかけ、
お礼も言った。



END