どれくらい走ったのだろう。
全速力で走ったつもりはないのに、目的地には15分足らずで着いてしまった。
爽やかな波の音が耳に響き、踊るように吹く風があたしの体をくすぐる。
晴れているせいか、波はそんなに高くない。
…でも、ここから飛び降りれば、必ずと言っていいほどの確率で死に至るだろう。
『…嘘だろ…?』
今でも忘れることの出来ない、お父さんの嘆き。
『反対はしない』
一生忘れられない、お母さんの微笑み。
『新種のウィルスの感染者は、園田 明日美さんです』
何度も頭にこだまする、友人の死。
───そして
『美音』
永遠に響く、翔の声。
手紙を書いた。
あたしに関わった人、すべてに。
正直、10人くらいで終わるかなって思ってた。
深く関わっていない人を除いたら、あっさり終わるだろう、って思ってた。
だけど、実際に書いてみたら。