でも、やっぱりあたしは、いつまでたっても弱くて。


涙ばっかり、

弱音ばっかり、

大好きな人にみっともないところばかりを、見せていた。


時々彼が見せる、切ない表情に気づかないふりをして。



「…あたし、最後を翔と過ごせて、」



大好きだけど。


大好きだから。


好きな人には、
愛してる人には、
大切な人には、

笑っていてほしい。



「…幸せだったよ――…」



翔の動きが、完全に止まった。


…ような、気がした。


強くあるって決めたのに、こんなときに俯いて、

彼の表情を無意識のうちに見ないようにしているあたしは、筋金入りの意気地なしだね。



最後の言葉は、口では言わない。


一生残しておけるように。



「…美音」



翔の言葉を合図にして。


あたしは思いっきり、走り出した。



「美音!?」



彼の叫びに、あたしはもう振り向いたりしない。


たったひとつ、あなたの幸せな未来を願って。



ただ、がむしゃらに走り続けた。