だけど、あたしは首を横にふる。



「美音?」



不思議に思ったのか、翔の手が止まった。


あたしの前に差し出された彼の手には、プリクラが握られている。


全部で5枚のプリクラに写るあたしたちは、どれも笑顔を絶やしていない。


翔…。


このプリクラに写るあなたの笑顔は、本物ですか?



「いらない」



まっすぐ、翔の瞳を見つめてそう言った。



手にしてしまえば、きっと涙がこぼれる。


受け取ってしまえば、きっと決意が揺らぐ。


すがってしまえば、きっと強くはなれない。



ゲームセンターの騒音を背に、あたしは翔に別れを告げる。



「翔…あたしね」




強くありたかった。


どんなに悲しいことがあっても、溜めた涙をこぼさない。

そんな人になりたかった。


強さってなんだろう。

そんなことを考えて眠れなかった夜は、何度あったのだろう。


そのたびに翔の顔を思い出しては、自分を保っていたつもりだった。