隣の県に住む明日美とは、今はメールくらいしかしていない。


それでも、10歳までは同じアパートに住んでいて、

よく2人で泥だらけになるまで遊んで、それぞれの親に怒られてたっけ。


小5になる頃にあたしがこっちに越してきて以来、一度も会っていなかったと思う。


それでも週に1回は、メールか電話でお互いのことを報告しあっていた。


つい、一昨日だって、


『今度遊びに行くね!』


そう、嬉しそうに言っていたばかりなのに。




「…美音…」



後ろから聞こえる翔の声を、あたしは背中で受け止めながら。


崩れ落ちるように、部屋の真ん中に腰を落とした。




「…美音…大丈夫だから…」



あたしの肩を掴みながら、優しく言葉をかけてくれる翔。


翔の顔を見て、安心したい───


そう、思うのに。


目の前は真っ暗で、瞳は何も写そうとはしなくて…



瞳からは、ただ、

冷たい滴が溢れてくるだけだった。