目が覚めて、翔が隣にいなかった時は、これ以上ない不安に襲われそうになったのに、

いつもと変わらない彼を見た瞬間、体中が安心に包まれる。


あたしって、自分で思ってる以上に単純なのかも。



「おはよう。
朝ご飯できたって、お前の母さん言ってたよ」



ドアノブに手をかけながら、笑顔でそう言う翔の顔を、なぜかあたしは直視することができなかった。



「ありがとう。
着替えたら行くね」



あたしも笑顔でそう返す。


翔の目を見つめて、"外に出てて"の合図。

気づいてるはずなのに、翔はいっこうに動こうとしない。


結局、早く着替えをしたかったこともあり、あたしは先に折れて、ベッドから立ち上がった。



「…恥ずかしいので出ててクダサイ。」



意味もなく敬語になりながら、ドアを閉めようとするあたしと、それを阻止しようとする翔。



「「………」」



無言のまま、押したり引いたりを繰り返す。