「うん。翔と両想いになったあの日、コスモスが咲いてたなあ、って」

「コスモス?まあ、確かに咲いてたけど…。
なんでいきなりそんなこと?」



はたから見れば、あたしたちの会話は何気ないカップルの会話にしか過ぎない。


だけど、あたしたちには他の人たちとは違うところが、1つだけある。


それは、あたしが病を背負っているということ。


消えない事実を、あたしはあとどれだけ抱えていなければいけないんだろう。


それでも、今だけは。

大好きな人と、一緒にいるときだけは。
そんなこと、忘れてしまいたい。



「翔…知ってる?
秋桜の花言葉。
あたしもこの間初めて知ったんだけど…」



いきなり先の見えない話をし始めたあたしを、翔は不思議な目で見ている。


お互いの瞳を見つめあいながら、"最後"の夜を過ごす。



「秋桜の花言葉はね、"乙女の純潔・真心"なんだって」



あたしの話を黙って聞く翔は、どこか寂しげに表情を曇らせる。