ポタリ…ポタリ…と、翔の瞳から溢れた滴が、あたしの肩を濡らしてく。


このいびつな形のみずたま模様は、彼の弱さの塊。


震える声は、だんだん小さくなっていく。


あたしは、どうすればいいのだろう。


何て声をかければいい?


"大丈夫だよ"

"あたしは死なないよ"

"ずっと翔のそばにいるよ"



全部全部、あたしには言えない言葉。


あたしには、ふさわしくない言葉。


自分がこんなにも無力だなんて、思ってもみなかった。



「…翔…ごめんね…」



自分でも気がつかないうちに、冷たい涙が頬を伝っていた。


お互いの温もりを、お互いの肌で感じあう。


こんなにも温かくて、

安心できる翔のぬくもりを

あと数時間後には、感じられなくなってしまう。


そう思ったら、自然と涙がこぼれていた。






他には何も

いらないから

どうかどうか

お願いがあるの。



「…ごめんね───…」



あたしから翔を、とらないでください―――…。