「ただいまー」



ドライヤーで乾かしたものの、まだほんのりと濡れたままの髪を、タオルでこすりながら部屋に入る。



「おかえり」



部屋には、既にジャージに身を包んだ翔の姿。


ずっとずっと、憧れだった。


同じ部屋に、翔がいること。

翔と同じ屋根の下で時間を過ごすこと。


こんな形でその夢が叶うとは、ちょっと前のあたしには想像できなかったと思う。


それでもあたしは、今が幸せだって、胸を張ってそう言える。



「…何してんの?」



ボフン。と、柔らかさが自慢のベッドに体を沈め、翔の手元を見る。


よくよく考えれば、あたしがお風呂に行く前から、翔はしきりに手を動かしている。


宿題か何かをしているのだろう、と気にも止めていなかった。



「…内緒」



覗きこもうとするあたしを避けるように、"それ"にかぶさる翔。


そんなに隠されたら、逆に気になるし。



「何で内緒なの?」