やっとのことで、自分の病気のことだけを話し終えたあたしに続いて、翔が結婚のことを切りだそうとしたときだった。
お父さんが、低い声を出したのは。
「嘘、だろ…?」
お父さんは俯いていて、表情を読みとることはできない。
お父さんがあたしの話を信じたくないのは、痛いほど分かる。
あたしだって、今までずっと信じていた"医者"の言葉を、数時間前には信じられなかったのだから。
けれど翔が、"一緒にいよう"って言ってくれたから。
あたしは自分を取り戻すことが出来たんだ。
だからお父さんにも、ちゃんと理解してほしい。
そしてみんなが"あたし"を認めた上で、最高の思い出を作りたい。
だから───…
「なあ、母さん。嘘だろ?美音が死ぬなんて……。
そんなの…」
こんなお父さん、見たことない。
あたしが知ってるお父さんは
威厳があって 厳しくて 怖いけれど
お母さんの誕生日、結婚記念日、クリスマスに、新婚旅行をした日まで覚えていて。

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