『え……?』
梅雨は明けたはずなのに。
降りしきる雨のせいで、部屋は蒸し暑かった。
『翔くんは、それで幸せになれる?』
お母さんの言葉が、胸に刺さった。
最初から、そう簡単に賛成してもらえるとは思っていなかった。
でも、どうしてそんなことを言うの?
それってまるで…
あたしは死ぬんだから、結婚なんてしたら翔が不幸になるって
そう言っているように聞こえるよ?
下がりきった頭は、一向に動こうとしなかった。
夏の始まりだからなのだろうか。
体中からは、今までに体験したことのないくらいの汗が吹き出していた。
『幸せになります』
低く優しく、あたしとお母さんの耳に響いた声。
翔の声はいつだって、あたしのことを喜ばせてくれるんだね。
翔の横顔は、希望に満ちていた。
あたしの大好きな、まっすぐな瞳。
"翔"という人間の、象徴。

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