――もしかして準斗くんに、恋してるの?――
そんな考えが、頭の中に浮かぶ。その途端、
「穂乃果ぁ、顔が赤いよぉ?」
いつもより可愛い声で、準斗くんが言った。
か、か、顔が赤い……!?
変な妄想してるの、バレちゃったかな!?
私が言ってる『変な妄想』とは、私は準斗くんのことが、一人の男の子として好きなのだろうか……などと考えてしまっていることのことだ。
私は慌てて、首を横に振る。
「ふ、普通だよ、普通!」
「え~、ほんとにぃ? なんか変だよ穂乃果」
鋭い……。
「変じゃないよ」
私がそう言った、その時だった。
「あっ、笹山さん」
「ほんとだ~、笹山さんだ~」
見覚えのある女の子二人組が、私達に向かって小走りに近付いてくるのが見えた。
あの人達は、確か……。
う~ん、確かに見たような気がするけれど、すぐには思い出すことができない。
人とあまり関わらない私は、人の名前や顔を覚えるのが苦手だった。

