とは言ったものの、俺には彼女の痛みなんてものはこれっぽっちも感じることはできない。
俺は彼女ではないし、彼女が実際にどう思っているのかも分からないのだから。当然といえば当然だった。

俺は彼女のことを、何一つ分かってはいない。

分からないけれど、どうしようもなく彼女、春夏冬さんのことが気になってしまっていた。
あの容姿だからではない。容姿が違っていたとしても、俺は春夏冬さんを気にかけていたに違いない。
俺を惹きつけてやまないのは春夏冬さんの存在そのものである。
春夏冬さんそのものという存在が、とてつもない魅力を放ちに放っている。

それに他の奴等は気づかない。
それはそうだろう。彼等は春夏冬さん自身を見ているのではなく、春夏冬さんの外付けのハードウェアを見ているだけに過ぎないのだから。
外付けのハードウェアにこだわっているだけなのだから。

春夏冬さんを誰も見ようとはしない。
彼女も見られようとはしない。

それが、まるで暗黙の了解だとでもいうように、成り立たせてしまったのだ。


さて、そんななかのクラスの俺のポジションはというと、『春夏冬純に恋する哀れなクラスメイト』

我ながら嫌な肩書きがついたもんだ。俺がいつの間にか春夏冬さんを目でおっていたのを、クラスの女子は目敏く発見してしまった。そこからは噂が光の早さで広まった。
発見されて困りはしないが、時々クラスメイトの男子がふざけてからかってくるのは、正直なところ腹が立っていた。
だって彼はこう言ったのだから。

「春夏冬さん美人だもんな」