アイドルとボディガード



朝、桐生に事務所まで送ってもらって、普段通りに笑顔でこなしている。
昨日あんなことがあったのに……。

首元の跡はやっぱり残ってしまった。
鏡を見るたびに、目立つ赤い跡にどうしても目がいってしまう。
その度、色々思い出し怖くなる時もあるがあの時の嫌悪感はない。

……桐生が消してくれたから。

だけど跡はしばらく残りそうだ。
これは、しばらくコンシーラーが手離せないな。


自分でも曖昧だった桐生への気持ちに、奴本人は気付いていた。

私はいつの間にか、好きになっていた。
口ではめんどくさいとか言いながら、いつも隣で守ってくれていた。

でもストーカーの犯人が捕まったからと突然何も言わずにいなくなって。
と思ったらピンチには、また突然現れて助けられて。

……で、今度こそ関係を断ちたいのか奴の携帯電話が通じなくなった。
着信拒否でもされているのだろう。



卑怯だ。
私の気持ちを知っていて、トラウマが残らないようとはいえあんなキスをしておいて。

こんなに簡単に切り捨てられてしまうなんて。