アイドルとボディガード

「もう、いやだ。消えてなくなりたい」

悲痛な声。

千遥、そう呼びかけようとしてやめた。
だめだ今は何を言っても千遥の心には届かない。


「……あいつが触ったとこどこ?」

「……ここ」

「俺が消してやる」

そう言って指されたところに唇をつけた。
あいつとダブるのか、千遥は慌てて俺を引き離そうとする。

「やだ、やめて!」

「千遥、俺だ、あいつじゃない」

「分かる、分かってるけどっ、怖いの。なんでこんなことするの?」

泣き腫らした目で、俺を怯えるような目で見る。

「お前の中からあいつ消してやる」

「ど、どうやって?」


「……俺が触って嫌じゃないな?」

そう聞くと下に目線をずらして、考え込む千遥。
ちらっと俺の目を見ると、顔を更に赤くしすぐさま顔をそらす。

少しの沈黙の後小さな声で答えた。



「い、……やじゃない」

か細く消えそうな声。
俺はそれを聞いて、千遥にキスをする。

俺の意図が分かったのか、千遥は抵抗しなかった。


「……んっ」

唇から問題の首筋へうつっていく。
俺の一方的な行為に、声を漏らす千遥。
身を強張らせ、ただ俺に身を委ねていた。




その後、千遥に俺の部屋着のTシャツとハーフパンツを貸し、ベッドで寝かした。
疲れたのか、横になるとすぐに寝息をたて始めた。
俺はその様子を見ると少し安心してソファーに横になった。


千遥の気持ちを利用した荒治療に罪悪感を感じながら、携帯から千遥の名前を消した。