好きで悪いか!



「……しません。妥協しないでください、先輩。こういうことはちゃんと、私のこと好きになってからにしてください。先輩のこと、見損ないました。今の先輩は、かっこよくないです」

 うやむやに流そうとしている腕を振り払い、荷物を持って、先輩の部屋を出た。 

 冷水を浴びたような顔をしてその場に凍りついた先輩は、追いかけても来なかった。
 夜にメールがきた。


『ごめん、どうかしてた。古賀さんの言うとおりだ。俺はかっこ悪い。古賀さんのような勇気はないよ。今まで保ってきたものを壊す勇気もなければ、始める度胸もない。でもいつか呑み込んで、昇華する。それまで妥協はしない。ありがとう、受け容れてくれて、そして振ってくれて。勉強頑張って』





「お前、馬鹿じゃねーの? つか悪女だろ、悪女。高嶺の花センパイと、せっかく付き合えたのに。向こうがその気になったとたん振るなんて、鬼かよ」

 バイト始めたから奢ってやると呼び出され、雅紀とハンバーガーショップにて。
 先輩とのことを訊かれ、正直に話したら酷い言われようだ。勿論先輩が片想いしている相手が、お姉さんだということは話していない。

「振られたのはこっちだよ」

 思い返せば一度も、友永先輩から好きだと言われたことはない。
 私がひたすら『好き』の押し売りをして、先輩の弱味に付け入っただけのことだ。