だけど、ふと思う。先輩らしいとか、らしくないとか、それは勝手な偏見かもしれない。

 冷静沈着、優秀で、完璧すぎて近寄りがたい。
 ほとんどの下級生がそんなイメージを抱いている生徒会長様と、せっかく少しだけお近づきになれたんだ。

 もっと色んな先輩が知りたい。
 意外な一面も、完璧じゃないところも、知り得るくらい「友達」になれますように。



 そんな願望を胸に抱きつつ、辿り着いた先輩の家は、豪邸だった。

 塀の周りを歩いているときには、まさかここが先輩の家だとは――というか、個人のお宅だとは思いもしなかった。なんかでかい建物があるなあって、大きすぎて逆に気にも留まらずに歩き流していたら、

「ここ」

 と、塀の切れ目に現れた立派な門扉の前で足を止めた先輩が言って、びっくりした。

「えっ、ここって家なんですか?」

 目を丸くする私に、先輩も目を丸くしたあと、苦笑した。

「家……としての機能は、果たしてないかもだけど。一応、自宅」


 友永先輩のお父さんは、地元で名の知られている「友永不動産」の社長さんだ。

 不動産屋さんといっても、個人相手に賃貸アパートを仲介してくれるような「町の不動産屋さん」ではなくて。
大きな土地を売買して利益を生み、県内の一等地にいくつもビルを所有しテナントを抱え、自らもゴルフ場やレストラン、ホテルなどを経営している。
 いわば、すごくイケイケな不動産屋さんだ。