「友永先輩、好きです!」


 じりじりと照りつける太陽。
 乾いた砂埃が舞うグラウンドで、見かけた先輩を追いかけて、告った。

 オシャレなメッセンジャーバッグを斜め掛けした背中が、振り返った。

 細身の高身長、艶やかな黒髪。
 トップから厚めに下ろした前髪は眉にかかる程度で、サイドと襟足は短めに揃えられたヘアスタイル。襟元がピシリと整ったワイシャツに、きちりと結ばれたネクタイ。

 漂う清潔感、薫る気品。

 ああ、どうしてこんなにも格好いいんだろう。見るたびにそう溜息をついては、妄想を募らせた。
 もしも好きだと伝えたなら、先輩はなんと言ってくれるんだろうかと。


「誰?」

 怪訝そうに眉をしかめ、先輩は落ち着いた口調で尋ねた。

 はっ、そうだ。自己紹介!

「一年八組の、古賀みやびです。初めての生徒総会で、友永先輩をお見かけしてから、ずっと好きです!」

 言えた、ついに言った! この三ヶ月間、募らせてきた思い。


 先輩は困ったような顔をして、きっぱりと言った。

「ありがとう。でも俺、彼女いるから」

「知ってます」

 友永先輩の彼女は、三年二組の園田沙織先輩。
 色が白くて、背が高くてすらりとしている。さらさらの黒髪ストレート、小さな顔にはお人形さんみたいに愛くるしいパーツが揃っている。

 派手ではないのに華のある、清楚な美人。
 先輩にとてもよく釣り合いのとれた恋人。