哀しみの瞳

ある日、秀の実家へ、珍しい客が来ていた。



(礼子の父 中野 総一郎)

「わたくし、秀君の勤めてます、やよい法律事務所の所長しております。中野総一郎と言います。これは、娘の礼子です。秀君とは同じ学年の同じ法学部でした。まぁ、うちは、秀君ほど、できはよくありませんがね」

(礼子)
「お父さんったら、ひどい言い方!
中野礼子と申します。吉川君とは、仲良くさせてもらっています。御父様、御母様には、初めてお目にかかれて、本当嬉しいです。」


正雄と君子は、初めっから、二人に圧倒されていた。


「まぁ、何と言いますか、親バカなのは、重々、承知の上で、伺っておるのですが…礼子が、是非に御両親に挨拶に行ってくれるように、頼むもんですから」


(父正雄)
「どういう事でしょうか?」


(総一郎)
「いやぁっ、その、まぁ、うちの礼子とですなぁ、お宅の秀君とを、結婚を前提に交際させてやって頂きたい、ということなんだが。どうでしょう?ここは、親同士が同じ思いで行かせてもらうという事で!」