哀しみの瞳

どうしても、秀に会いたかった。会って顔を見るだけでよかった。



秀っ、秀っ、私は、秀と一緒にいることが出来なくなるの!
でも秀には、言えない。そんなむごい事、言えないよ。理恵もう遠くに行っちゃうんだよ!何て。理恵が5才の時から、秀はずっと側にいてくれた。どんな時も理恵を助けてくれて―――


悲しいよ!秀っ、助けて…




理恵は、秀のアパートの前で座っていた。どれだけ時間が経ったであろう。
やっぱり、何も言わずに勝手に出て来た事を少し後悔していた。とっ

そこへ、あの礼子がやってきた。

(ええっ?)

「あらっ、貴女は、いつぞやの子?なんでまた此処にいるのかしら?」

「……」
とっさに礼子は嘘をついた。


「ああっ、吉川君ね?今日は残業だって言ってたわ!私、吉川君に頼まれて、忘れ物取りに来たのよ?貴女何か吉川君に用事あったのかしら?何なら私が代わりに聞いてあげましょうか?吉川君に伝えておくけど」


「いいえ、別に」


「じゃぁ、帰ってくれるかしら?」



「ああっ、はいっ」