哀しみの瞳

理恵~年の瀬~



秀と武さんと沙矢と4人で初詣に行く約束をしていた。11時頃に秀と武さんとで、迎えにやって来た。
沙矢は、一足先に理恵の家に来ていた。
沙矢ちゃんが初詣に着物を着て行きたいと言って、そのせいで理恵も着物を着せてもらう事になった。
初めての着物。母が父に内緒で、作ってくれていた、真っ赤な、紬のアンサンブル。髪は、沙矢ちゃんに、結んでもらった。


神社に着いてから、二組は、別々に行動を取ることにした。


秀は理恵と二人で神殿に向いてお参りをした。


(ガランっ、ガランっ)
手を合わせる。


秀は、隣りの理恵を見る。

(今日の理恵は、本当に可愛い!何をお願いしてるのだろう?やけに、長い間、手を合わせているけど)



二人で一緒に御守りを買った。


俺は理恵の合格祈願用、理恵は俺の安全祈願を。それぞれ交換した。



(秀)「理恵?何を祈ってたの?長い間…」


(理恵)「内緒!!」


(秀)「幾つお願い事したのぉ?教えて?」


(理恵)「欲張っちゃったぁ!3個」


(秀)「ええっ!3個もっ?
何か教えてくれるまで、離さないぞっ」理恵を強く抱き締める、秀。



(理恵)「ああっん!分かったからぁー 一つ目は、秀がこれからも仕事頑張れますようにって、もう一つは、秀がこれからも、健康でいられますように、最後は、秀が…っ、もうっ、離してよっっ!」


(秀)「何でぇ、俺の事ばっかなの?こいつはぁー、許さないぞっっっ!じゃぁ、俺もう一回、お願いしなおして来る!理恵の事……」


走って行った。



その時理恵は、漠然とだけど、自分の願い事がもう叶わないのではないかと思っていた。でも、今、この時だけは、大切にしようと心に決めていた。今、秀が喜んでくれる事だけを、考えていよう、と