哀しみの瞳

秀がようやく帰った後―――


(待子)
「秀ちゃん、理恵のことになると、もう一生懸命で、私なんか、聞いてるだけで、何にも言えないわ!」


(次郎)
「俺も呆れてしまったよ!まったく」

(待子)
「本当どうしたものか、理恵にもまだ熊本の件、言えない上に、秀ちゃんにどう言ったらいいものか?あそこまで調べ上げて、資料を揃えて自分で計画たてて来られたら、圧倒されちゃったわねぇ」


(次郎)
「こうなったら、秀の気の済むように、話だけを、合わせてやろう!でっ、理恵にも一応、そこを受験させてやるんだ!そこまでしてやれば、秀も納得するだろう。どうせ理恵は、合格するはずがない。それからすぐに、熊本へ行かせても、間に合うだろう?」

(待子)

「あなたぁっ!合格するはずがないなんて!
秀ちゃんが家庭教師なのよ!もしかして合格するかもしれないじゃない?」

(次郎)
「たとえ、合格したところで、どうせそこへは、行けないんだ!その時こそ、お前がよくよく説得するんだな?分かったな!」