哀しみの瞳

一時も早く理恵の家に着きたかった。秀は、思いっきり走って行った。書類の入った袋を大事に小脇に抱えて。



「こんにちわぁ!」


「あらっ、秀ちゃん、そんなに息を切らして、もうっ、今日も、良い知らせなのかしら?」


「おじさんは?まだですよね?それと、理恵は?」


「ええっ、理恵は、今日はもうそろそろ戻る頃だけど……」




「ただいまぁ!」

「理恵っっ!!」
秀は、理恵の声がした途端に、振り向いて理恵に駆け寄った。



「ひでぇっ!どうしたの?すっごい、嬉しそうだけど?」

秀は理恵を、強く抱き締めた。暫く言葉にならなかった。理恵を抱き締めた途端に秀は、大人気もなく、泣けてきそうになった。


「ひでっ!痛いよ!もうっ、話してくれないと。ああっ、もしかして、就職先が決まったとか?」


「理恵っ!その通り!それに、理恵の受験先もね!」


「ひでぇっ、んんっ!分かったから、いい加減に理恵を離してくれる?」



それからの秀は、もう誰にも止める事は出来なかった。自分のことはそこそこに、理恵の大学受験の話をひたすら話し続けた。仕事から帰って来た次郎も、ただただ話を聞く一方だった。